どこでもライオン

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歩いて渡るレインボーブリッジ

大都市にはよく大きな橋がある。ニューヨークにブルックリンブリッジ、サンフランシスコにゴールデンゲートブリッジ、ロンドンにはロンドンブリッジなど。東京も例外ではない。東京が誇る大きな橋と言えば、芝浦とお台場を結ぶ「レインボーブリッジ」だ。レインボーブリッジは長さ約800メートル、塔の高さ120メートル。ブルックリンブリッジ、ゴールデンゲートブリッジよりは短く、ロンドンブリッジよりは長い橋だ。

レインボーブリッジは名前(愛称)により使命感を感じてしまったのか度々鮮やかな色にライトアップされている。それこそレインボーな時もあるし、青い時も赤い時もある。2020年には、新型コロナウイルスの感染拡大に警戒を呼びかける「東京アラート」が発令され、都庁と共に赤く点灯していた。東京アラート自体は「やばそうだけどよく分からないね」という国民の反応が多かったように思うが、レインボーブリッジに関しては「赤もかっこいいね!」と言われていた。(かっこいいレインボーブリッジの写真を撮りに行く人がいて、それを批判する人もいた)。もしかするとレインボーブリッジは何を着ても似合ってしまうスーパーモデルみたいなものなのかもしれない。東京タワーと配色傾向としては似ているけど、いずれも東京の薄暗い夜とねっとりと黒い東京湾に映えている気がする。こういったライトアップ系は一歩間違えたら安っぽくなるし、配色が多ければ多いほどリスクは上がるから、レインボーブリッジが成功しているのはすごいと思う。

そんなレインボーブリッジを歩いて渡れると聞いて、日没前後を狙ってチャレンジしてみた。日没前後を狙ったのは単純に日昼は日差しが強そうなのと、ラッキーであれば日没を見られるかと思ったからだ。私と同じように日没目当ての人はチラホラいて、一眼レフカメラを構えて日没タイミングを待っている人もいたし、見晴らしの良い場所でしばし立ち止まったりベンチがあれば座って待っている人もいた。私は(なんとなく)早く渡りたい気持ちが強かったのでほとんど足を止めず歩いた。ちなみに日の出タイミングを狙うのは、遊歩道の開放時間(4月1日~10月31日は9時~21時、11月1日~3月31日は10時〜18時)を鑑みると厳しそうだ。

「レインボープロムナード」というのがその遊歩道の名前で、距離は1.7キロ程度で片道20分〜30分程度で渡り切ることができる。臨海副都心と品川・天王洲アイルを見渡せる「サウスルート」と、東京タワー、スカイツリーを見渡せる「ノースルート」があり、今回私が通ったのは「ノースルート」だった。東京タワーが見られる側の方が夕陽は綺麗に見えるかなと思ったが、結局太陽がずばり沈んでいくところは見えなかった。でもうっすらオレンジ色に染まっている空は趣があって悪くなかった。

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レインボーブリッジは(当たり前だけど)海沿いに面しているので風が強く少し寒かった。耳が少し痛いくらい。5月でこの状況だから冬にレインボーブリッジを渡る時は耳当てを含む防寒は必須だと思う。道路の真隣を通る時は車の通行音で少し騒がしく、後ろから人が来ているか全然分からなかったので、走っている人が抜かせるようにチラチラ後ろを振り向きながら歩いた。都市散歩というよりは山歩きのようなストイックで不思議な気分になった。景色の移り変わりが分かりやすい為、歩くのは楽しかった。東京スカイツリーと東京タワーを同時に観ることもできた。景色のアンダートーンにある東京湾も東京湾らしく深い諦念を感じさせる波をずっと寄せ続けている。東京タワーに上るのもいいけどここから見える東京もなかなか東京らしい。

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出口には灰色のそっけないエレベーターがあり、結構高速だった。エレベーターからも外の景色が見られるので写真を撮りたかったけどスピードにカメラがついていけなかった。エレベーターには流暢な英語と日本語を話す国籍不明カップルと同乗した。色褪せた金髪の傷んだ髪を爆発させた男の人とブラウンの傷んだ長い髪の毛を肩に垂らしている少し肉厚な女の人の若いカップルだった。会話の内容は全て聞き取れなかったし記憶にも残らなかったが、気だるくて、少し疲れている様子だった。

エレベーターを降りてから少し歩き、自動ドアを抜けて外に出た。出入口は特にレインボーブリッジ関連のお土産コーナーなどがあるわけでもなく簡素な作りで、自動ドアにほのぼのとするような虹の絵が描かれていた。しかもダブルレインボー風。入場料もなく、商業的じゃないのがつくづく素敵だ。もともとレインボーブリッジの正式名称は「東京港連絡橋」で、硬派で実用的な橋だから全体的にチャラチャラしていない。多分橋ってそういう側面が強いと思うけど。地上からはレインボーブリッジのお腹が見えた。下から見たレインボーブリッジはスリムだった。乾いたムカデのお腹に少し似ていた。

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