どこでもライオン

This lion is everywhere and nowhere.

バイト先としてのサンドイッチ工場

コンビニで販売されるサンドイッチの工場で働いた。食品工場なので完全防御服を着て冷蔵庫の中のように冷えた空間で働いた。ベルトコンベアに乗って4時間休みなく流れてくるバゲットに千切りにんじんを詰め続ける。常勤の女の人が見回っていて「多い」とか「少ない」とか注意をしつつ、間に合わなくなってくると加勢してくれた。高速で適格な量を詰め込んでいくのがすごい。 

単純作業なので退屈するかなと思っていたが、にんじんを詰め込むのに精一杯でずっとにんじんのことを考えていた。字面にすると「にんじん、にんじん…」のような感じだ。長いようなあっという間のような不思議な時間だった。滅茶苦茶寒かった。

▶ルナールの切ない小説が思い出された

にんじん(新潮文庫)

仕事中にんじんのことばかり頭の中で唱えていたせいで、仕事が終わってからもたまにぼーっとするとにんじんのことを考えるようになった。よくわからない後遺症だ。

後日談。このアルバイトで少し仲良くなった人が休日に渋谷でお茶しようと誘ってきた。Mさんという30代の女性で、子供がいるということだった。当日渋谷に行くと3歳と8歳の子供が2人ついてきていた。簡単な世間話と苦労話の後、「これを買うとすぐ金持ちになれる」系の話が始まったのでかなりびっくりした。びっくりしていると、8歳の子供が「ふん」という顔で見てきた。少し諦めたような表情にも見えた。その手の出来事が初めてだったので何を感じればいいかすらよくわからなかった。