どこでもライオン

This lion is everywhere and nowhere.

試食販売を行うスーパー

試食販売員とは、お客さんに試食をしてもらいながら対象商品をおすすめする人のことだ。言うまでもなく、試食販売員の力量により商品の売上が大きく左右される。

▶︎芸人の柳原可奈子さんは、とても優秀な試食販売員だったらしい

試食販売員をするにあたって最初に研修があった。基本的な用語を学んだ後シミュレーションを行った。だいたい通行する人役に対して声をかけて試食をおすすめするというシチュエーションだが、なかなか目が合わない人、せかせかしている人など設定が微妙に細かく、すべてにおいて「大きい声で目を引き」「視界に入る」ことが大事とされていた。(※試食販売員の派遣元により考えは異なると思う)。その為とにかく大きい声を出す練習をしたが、派遣元の指導員の地の声の方が大きいくらいで、なかなか合格をもらえなかった。(合格をもらった時には声がカスカスだった)。

▶バスケの守備に挙動は少し似ている

試食販売の現場は神奈川郊外の大型スーパーで、真夏ながら販売するのは常温の2リットルのスポーツドリンクだった。3本以上買うと商品が当たるくじ引きができるだけど、真夏に常温で2リットルのペットボトルを買おうという人はおらず、冷やした試飲ばかりはけていった。(その商品は何故か常温しか置いていない)。

立ちっぱなしの仕事なので終盤になると絶望的に足が痛くなってきた。持ち場が3平米くらいしかなくその中をぐるぐる歩くくらいしかできず、かなりの苦行だった。(いつもよりちゃんとした靴を履いていたというのもあり)。

一回派遣元の社員が来たので「こんな真夏に常温のスポーツドリンクは売れないから、この商品も冷やせないか」と聞いたら「常温しかダメなことになっている。このまま頑張って欲しい」と言われた。仕方ないので常温のスポーツドリンクを宣伝し続けた。「冷えているなら買うのになぁ」という意見が多々寄せられたけど、「常温対象なんです」と答えになっていない答えをむなしく戻し続けた。

ようやく閉店の際の「蛍の光」が店内に流れ出した時、足の痛さが際立ち泣きそうになった。ここまで足が痛くなった仕事はあまりないかもしれない。